TPR事件の上告について、最高裁により上告不受理の決定が下されました。

週刊税務通信記事(No.3662 令和3年7月12日号)によれば、法人税法132条の2《組織再編成に係る行為又は計算の否認》の適用の是非を巡り争われたTPR事件について、最高裁は、一審二審で敗訴していた納税者の上告を退け、上告不受理の決定を行ったとのことです。

本件は、TPR(上告人)が、完全子会社A社(被合併法人)との適格合併により引き継いだ未処理欠損金合計約11億円を上告人の損金に算入したことについて、課税当局が、法人税の負担を不当に減少させる結果になるとして法132条の2を適用し、更正処分したことについて争いとなりました。本件は、いわゆる完全支配関係がある法人間で行う合併(法法2十二の八イ、法令4の3②)であり、かつ被合併法人から引継ぎを受ける未処理欠損金に係る特定資本関係5年超の要件(法法57③)を満たしていたにもかかわらず、一審二審は、同法の適用対象となり得るとし、TPRが行った合併は、組織再編税制に係る規定を租税回避の手段として濫用することによって法人税の負担を減少させるものと判示致しました。

一審二審が示した判断枠組みは、平成28年の最高裁判決(ヤフー/IDCF事件)で示されたものを踏襲し、①行為・計算の不自然性と、②そのような行為・計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等の不存在の2つの考慮事情から、法132条の2の不当性要件該当性を肯定していますが、地裁・高裁は特に、本編合併に当たり、TPRがA社合併直前に完全子会社B社を設立し、A社の事業(棚卸資産及び従業員)をB社に移管した上でA社を合併したことを問題視したものと思われます。すなわち、形式的には適格合併の要件を充足するものの、組織再編税制が通常想定している移転資産等に対する支配の継続、換言すれば、事業の移転及び継続という実質を備えていないという判断です。

完全支配関係が成立する法人間においても、被合併法人から移転した事業が継続することを要すると解することについては、適格合併の要件として明らかにされておらず、TPRの上告により最高裁がどの様な判断をするのか注目されておりました。しかし、今回最高裁がTPRの上告不受理としたことは、高裁判決が確定したものの、最高裁としての判断は何ら示されなかったため、果たして完全支配関係が成立する法人間の合併においても移転資産等に対する支配の継続が要求されるか否かについては、依然不確実な状況といわざるを得ないというのが実情と思われます。

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