中古マンション転売に係る仕入税額控除事件、国側敗訴

9月4日付日本経済新聞によれば、同月3日、東京地裁(清水千恵子裁判長)は、中古賃貸マンション売買時の消費税の消費税の税務処理が争われた訴訟で、東京国税局の課税処分を取消す国側敗訴の判決を言い渡しました。原告エー・ディー・ワークス社は、中古の賃貸マンションを購入し、大規模修繕等で価値を高め、投資用不動産として販売する事業を行っており、同マンション取得時の消費税の仕入税額控除について個別対応方式を採用し、課税資産の譲渡等にのみ要するものとして仕入税額を全額控除したところ、東京国税局より、同マンション取得には賃貸収入を得る目的もあったとして課税資産の譲渡等及びその他の資産の譲渡等に共通して要するものと判断され、約5億3千万円の課税処分を受けておりました。判決で清水裁判長は、「仕入の目的が不動産の売却であることは明らか。賃貸料収入は不可避的に生じる副産物として位置付けられる」と指摘し、賃貸料収入が見込まれるからといって全額を差し引けないとする国税の判断は「相当性を欠く」と結論付けたとのことです。

今回勝訴したのはエー・ディー・ワークス社ですが、実は全く同様の事案であるムゲンエステート社の一審判決(東京地裁令和元年10月11日判決)では同社の請求が棄却されました(現在控訴中)。しかしながら、エー・ディー・ワークス社の訴訟に関与した朝長英樹税理士によれば、「分譲することを目的として取得したマンションは、課税仕入れの時点では課税資産の譲渡等に要するものに該当することは明らかであり、仮に一時的に賃貸用に供されるとしても、将来的にすべて分譲するものについては、課税資産の譲渡等にのみ要するものとして取り扱って差し支えない」と明記した平成7年及び平成9年の文書が国税当局内部に存在したことから、同氏は「二十数年以上もの長きにわたって採られてきた税法解釈を国税当局が変更した(中略)国税当局が主張する新たな解釈には誤りがある」(月刊税務事例2018年3月(Vol.50 No.3)10頁)と主張されておりました。ムゲンエステート社の一審判決では、平成7年及び平成9年の文書について触れることなく判断されておりましたが、エー・ディー・ワークス社のケースではこの点が重視された可能性もあります(ちなみに国税当局は、平成9年文書の存否は確認できないとし、平成7年文書はその存在を認めた上で、購入時に入居者なしという点でムゲンエステートの事案と異なると主張しています-T&Amaster No.786 2019.5.13 8頁)。

このように、全く同様の事件について、同じ東京地裁で真逆の判断が示されたことになります。朝長税理士によれば、同様の課税処分が次々と出されており、ムゲンエステート社、エー・ディー・ワークス社に続いて審査請求、訴訟が提起されることが予想されるとのことです。両事件も今後当然審級していくことでしょうから、その都度どのような判断が示されるのか注視していく必要があります。

なお、令和2年度税制改正により本年10月から居住用賃貸建物に係る消費税は原則仕入税額控除ができなくなるので、今後は上記で争われたような問題は起きないこととなります。ただし、「居住用賃貸建物」の取得から3年以内に、一部を事業用賃貸に転用したり、譲渡した場合には、それまでの貸付けや譲渡の額を基礎にした金額を基礎として計算した金額を仕入税額控除の対象として控除税額の加算調整が認められるので、仲介業者に一方的に不利となる取扱いは改められました。

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