中古マンション転売に係る仕入税額控除事件、続報

本年9月3日に東京地裁で勝訴した(株)エー・ディー・ワークス(以下、ADW)の親会社である(株)ADワークスグループのプレス・リリース(同月17日付)によれば、同判決の被告国側は、同月16日に原判決を不服として東京高裁に控訴したとのことです。先行している(株)ムゲンエステート(以下、ムゲン)の事案(一審はムゲン側の敗訴)は既に東京高裁に控訴されており、本年11月18日に判決が言い渡される予定となっているということで、ADWの一審判決に対し東京高裁がどのような判断を下すのか、大いに注目されるところです。

ところで、この先の上級審の判断は予断を許しませんが、仮に、納税者側に有利な判決が確定した場合、同様の課税処分を受けた他の事業者への影響について、T&Amaster(No.851) 2020年9月28日号(8頁)に気になる記事が掲載されていたので、情報共有させて頂きます。というのは、本Web Pageの前回記事(9月10日)でも記載したように、ムゲンやADWと同様の課税処分を受けた他の事業者は複数あり、いずれもムゲン及びADWの高裁判決の行方を注視していると思われますが、仮にムゲンやADWが勝訴「判決」を得たとしても、他の事業者にとって、それが国税通則法(以下、通則法)23条2項1号のいう「判決」には該当しないということになるからです。

ご承知のように通則法23条2項1号は、「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(略)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」は、その確定した日から起算して2か月以内に更正の請求を行うことができると規定していますが、ここでいう「判決」はあくまで自社の申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関するものであることが要求されるため、いくら類似の事件であるムゲンやADWの勝訴が確定したとしても、同「判決」を以って他の事業者は更正の請求をすることができないことになります。したがって、他の事業者に残された選択肢は、申告期限から5年以内に通常の更正の請求を行い(通則法23条1項)、却下処分を得た上で、審査請求・訴訟を提起しておかなければなりません。

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